BluetoothとZigBee、メーカーエンジニアがどちらを使うか迷った時、たった一つの判断基準とは?(2016年版)
BluetoothとZigBeeは似て非なるもの
近年、組込み機器開発に利用される無線規格として、BluetoothとZigBeeの2つが挙げられます。2.4GHzという同じ周波数帯(ISM帯)を利用し、「低速」「近距離」「低消費電力」と似たような特徴を持つことから、何かと比較されることが多いBluetoothとZigBeeですが、それぞれがメリット・デメリットとなる特徴をあわせ持っており、それらは双方のメリット・デメリットを補完するようなものであることから、検討している無線用途に必要な条件を明確にしていくことで、おのずとどちらの無線規格を選べば良いのかしぼられてくるケースも少なくありません。まずはそれぞれの特徴をしっかりと把握することが、失敗しない無線化への第一歩となります。
BluetoothとZigBeeの比較
それでは各ポイントごとにBluetooth、ZigBeeそれぞれの特長と比較をご説明していきます。
消費電力
一般的にはZigBeeのほうがBluetoothと比べてより省電力であると言われることが多いようですが、「ある使用条件下においては省電力」という認識が正しいといえるでしょう。
BluetoothもZigBeeも同じ周波数帯の無線ですので、データ伝送時の消費電力に大きな違いは現れません(もちろん製品差はあります)。では違いが現れるのはどこか、それは「スリープからの復帰時間の短さ」です。
Bluetoothにもスリープ機能はありますが、ZigBeeのスリープ時の待機電力はBluetoothより小さく、その上、復帰からデータ送信までに要する時間も数十msec程度と非常に短いと言われます。よって普段はスリープ状態で待機させておき、データを送りたいときだけ短時間で復帰させ、データ送信後にはスリープ状態に戻る、というような使い方がZigBeeの省電力性を十分に活かせる「使用条件下」といえます。
一方、Bluetoothはスリープからの復帰に1sec程度、そこから接続してデータが送れる状態になるまでに2~3sec程度要しますので短い間隔でスリープ状態にするような使い方には適さず、一度接続したら接続しっぱなしでデータ伝送を行うか、一定時間以上データ伝送を行わないようであれば、スリープにせず、モジュールの電源自体落としてしまったほうが節電につながります。
ZigBeeの省電力性を活かすためには注意が必要です
前述のようにZigBeeの省電力性を活かすためにはデータ送信間隔が十分に空いていることが条件となります。逆を言えば、十分な送信間隔が設けられない場合には、あまり省電力性に期待することができません。さらにスリープ状態にあるデバイスを相手デバイスから起こすことはできないため、スリープ状態にあるデバイスへデータを送ることはできません。双方向通信が必要な場合には注意が必要です。
その後、Bluetoothにも「BLE(Bluetooth Low Energy)」という新しい規格が登場し、ZigBeeと同じような「使用条件下」で利用できるようになりました。そうなるとBLEとZigBeeはどう使い分ければ良いのか?それは下記記事でご紹介しています。
BluetoothとZigBee、メーカーエンジニアがどちらを使うか迷った時、たった一つの判断基準とは?(2016年版)
相手機器
Bluetoothを採用する大きなメリットの一つとして、通信相手機器に既製品のBluetooth機器を流用できる点があります。片方は組込みモジュールを組込んだ専用機器を、その通信相手機器にはBluetooth内蔵のスマートフォンや携帯電話、またはPCや安価に入手できる外付けのUSBドングルを利用することで、相手機器側はアプリケーション開発だけ済み、ハードウェア開発に要する工数やコストを大幅にカットすることが可能となります。これは搭載機器の種類が多いBluetoothの大きなメリットといえます。
一方、ZigBeeは市販の搭載機器があまり多くないため、双方にZigBeeモジュールを組込むような専用機器同士でのシステム構築に向いています。
同時接続台数
ZigBeeは複数台同時接続を得意とする無線規格です。ひとつのZigBeeネットワークには、最大で65,536台のZigBee端末を接続することが可能で、1台のコーディネータから複数のエンドデバイスにブロードキャストでデータを送ることができる上、各エンドデバイスに個別に送ることも、逆にエンドデバイスからコーディネータへデータを送ることも可能です。また、ルータを使うことでメッシュ構造のネットワーク構築やバケツリレーのようなデータ転送も実現可能です。
一方、Bluetoothには1台のマスター機器に対して最大7台のスレーブ機器を同時接続できるピコネット機能が備わっています。PC1台に対して複数台の専用端末とのBluetooth通信を例に挙げると、それぞれのBluetooth接続に対して1つずつCOMポートが割り当てられますので、イメージとしてはPCから端末台数分のシリアルケーブルが伸びているような状態となります。それぞれの接続は独立していますので、同時接続といっても処理は時分割で行われることになり、数msecや数十msecオーダーのタイムラグが許容されないようなブロードキャストには適しているとはいえません。
メッシュ接続についても、Bluetoothで実現可能となりました。Bluetooth5からメッシュ通信が採用されています。
特長を活かした組込み機器への適用例
組込み機器への適用例として、Bluetooth、ZigBeeそれぞれの特色を活かした実例をご紹介いたします。
リモコン
ZigBee → テレビのリモコン

Bluetooth → ゲームのコントローラ

データ収集
例えば、ある計測機器の計測データを収集するシステムを考えます。
Bluetooth → 対既製品(PCやスマートフォン等)
ZigBee → 組込み機器同士
まとめ
ZigBeeの特長
ZigBeeはスリープ時の待機電力がとても小さく、また復帰時間も非常に短いことから、ある一定間隔を空けてデータ送信を行うような無線システムに向いています。普段はスリープ状態で待機させておき、データを送りたいときだけ短時間で復帰させ、データ送信後にはスリープ状態に戻る、というような利用方法がZigBeeの省電力性を十分に活かした使い方といえます(逆を言えば、十分なデータ送信間隔を設けられない場合、省電力効果はあまり期待できません)。
また、最大65,536台同時接続が可能なネットワーク容量を活かして、複数のセンサー情報を同時に収集するようなシステム(例えばモーションキャプチャなど)は、現状ZigBeeを選択するのが最適でしょう。
Bluetoothの特長
一方Bluetoothを選択する一番のメリットは既製品のBluetooth機器を流用できる点にあります。片方は組込みモジュールを組込んだ専用機器、その通信相手機器としてスマートフォンやPC、携帯電話を利用するのであればアプリケーション開発だけ済み、ハードウェア開発に要する工数やコストを大幅にカットすることが可能となります。
また、通信距離の長さや干渉への強さは、より正確なデータ通信が必要とされる医療機器や各種センサー情報の無線通信に向いており、Bluetoothの周波数ホッピング方式は周囲の無線機器へ与える影響も小さくなることから、各種無線機器が混在するような環境でのデータ通信に優位性を発揮するといえるでしょう。
Bluetooth | ZigBee | |
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優位性 |
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デメリット |
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